2015年に国連総会で採択された“持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)=SDGs”。ここ数年は、食品業界やファッション業界、旅行業界など様々なシーンで目や耳にするようになりました。
今回ご紹介する宮城県南三陸町では、SDGsに繋がる取り組みが盛んに行われています。町内の住宅・店舗から排出される生ごみやし尿等をバイオガスと液肥として生まれ変わらせ再利用する「南三陸BIO」、国内初の「ASC国際認証」を取得したカキ養殖など先進的な取り組みをご紹介します。
今や個人・企業に関わらず世界の共通認識となったSDGSを、社員旅行にも取り入れてみませんか?社員旅行や社員研修におすすめのプログラムなどもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
街なかやテレビなど、あちらこちらで耳にするようになったSDGs。環境に関する取り組みがクローズアップされることが多いですが、他にも貧困、経済など私たち人間社会が抱える様々な問題に関する17の目標(ゴール)が設定されています。
また、目標ごとにさらに細かくターゲット(指針)が示されていて、その数は169個にのぼります。例えば、目標1(貧困をなくそう)には「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる」など7個のターゲットが示されています。
目標達成年限は2030年とされていて、国ごと、業界ごとに様々な取り組みが始まっています。スーパーやコンビニでのレジ袋廃止は目標12や目標14の達成に、リモートワークやフレックスタイム制など多様な働き方の導入は、目標8だけでなく目標1や目標5、目標10などにも関連してきます。
ファッション業界でも、これまで廃棄されていた衣料品を難民キャンプへ届けたり、ファストファッションのあり方を見直しエシカル(倫理的な)ファッションを推進していくなどの動きが始まっています。
今回ご紹介する南三陸町では東日本大震災後、”森里海ひと いのちめぐるまち南三陸“を町の将来ビジョンに掲げ、環境や地域社会に配慮した養殖業者の国際認証 ASCを日本で初めて取得するなど、持続可能な町づくりに力を入れています。
ASCとは水産養殖業に対するエコラベルで、以下の7つの視点から審査し、合格した養殖業者だけが認証されます。
認証された養殖業者は水産物にASCのロゴを付けることで商品の信頼性をPRでき、消費者は環境や労働問題に対して責任を持って取り組んでいる養殖業者を選択することができます。
南三陸町では2016年3月、宮城県漁業協同組合志津川支所の戸倉出張所の牡蠣養殖が日本で初めてASC認証を取得しました。
震災前の戸倉の海は、漁師たちが競うように設置した養殖棚が密集し、海の栄養素などが不足。牡蠣は思うように育たなくなっていたそう。
震災後、漁業の復興について話し合う中で「これまでのやり方は間違っていた。持続可能な牡蠣養殖を目指そう」と漁師たちが立ち上がり、その想いが国内初のASC認証取得を実現させました。
国際認証FSCは、サステナブルな森林活用や保全など適切な管理を行っている林業者や自治体、また認証を受けた林業者・自治体からの木材を扱う流通・加工事業者のみが取得することができるエコラベルです。
“海のまち”という印象が強い南三陸ですが、実は町の総面積の8割が森林で良質な杉の産地でもあります。そんな南三陸の林業会社「株式会社 佐久」では震災後、漁師たちがASC認証を目指しているという話を聞き、「林業も負けていられない」と県内発のSFC認証取得へと動き出しました。
SFCの審査基準は、10の原則と70の基準から成ります。
【10の原則】合法性・労働者の権利・先住民族の権利・地域社会との関係・森林からの便益・環境・管理計画・モニタリング・高い保護価値・管理活動の実施
現在、南三陸の森林12000haのうち、約20%がSFC認証林となっています。
南三陸町では2015年10月、町内に拠点を置く町内に拠点を置くアミタ株式会社がバイオガス施設「南三陸BIO」を開所しました。
「南三陸BIO」は、家庭や店舗から出る生ゴミやし尿汚泥などをバイオガスと液体肥料にする施設です。生成されたバイオガスは施設内での発電などに利用し、液体肥料は農地に散布されます。
バイオガスによる発電量は年間21.9万kwh、液肥は年間4,500tも生産されているそう。その影には、生ゴミの細かな分別に取り組む町民や店舗の努力があります。
ひと口に生ゴミと言っても卵の殻や、南三陸町では日常的に食すカニ・貝・ウニ・ホヤなどの殻は除かねばならず、メカブの芯や茎も大きいものはNGです。それでも、循環型社会を共通の目標に協力し合うことで、南三陸BIOは今や“いのちめぐるまち南三陸”を体現する柱となっています。
南三陸町の志津川湾は2018年10月、ラムサール条約湿地に登録されました。日本にはラムサール条約に登録されている湿地が50以上ありますが、「藻場=海藻の森や海草の草原」の貴重さが評価されての登録は日本で初めてです。
親潮・黒潮・津軽暖流が混ざり合う志津川湾では、寒い地域の海に見られるマコンブと暖かい地域に見られるアラメの両方が生息するなど多様な生態系が形成されています。また、国の天然記念物で絶滅危惧種にも指定されているコクガンの越冬地であることも評価されています。
ただし、ラムサール条約は「生態系の保全」「湿地の恵みを賢く利用すること」「湿地を通しての学習・交流・普及活動」に努めているかも審査の対象です。地域の人々の賛同や協力があってこそ実現したラムサール条約登録なのです。
先進的な取り組みが注目される南三陸町で、社員旅行・研修旅行におすすめのプランをご紹介します。
ゴミを分別・収集し、バイオガスや液肥として生まれ変わるまでの工程を南三陸BIOにて学びます。南三陸BIOの取り組みに不可欠な、地域住民との協力体制も注目のポイントです。
所要時間:90分
定員:~40名 ※40名以上の場合は別途ご相談ください。
料金:
15名未満 1団体 37,500円
15名以上 1名 2,500円
開催場所:町内BIO施設
期間:通年
漁船で養殖現場を見学したり、ロープワーク体験や魚捌きの見学、土嚢づくりなどを通して養殖漁業について学びます。
所要時間:90分
定員:8名~80名
※80名以上の場合は入替制にて実施可能ですのでご相談ください
料金:1名3,300円
服装:動きやすい服装・靴・帽子・防寒着・少雨決行のため雨合羽
開催場所:町内漁港集合
期間:5月~9月末
※上記期間外を希望の場合は要相談
※漁業の収穫・作業体験はありません
FSC認証を取得している南三陸の株式会社佐久(南三陸森林管理協議会)と南三陸町観光協会が協力開発したプログラムです。実際に森の中に入り、適切な森林管理が行われているかの審査を疑似体験することで、FSC認証について理解を深めます。
所要時間:90分 ※山への移動時間を含まず
定員:10名~40名 ※40名以上の場合は要相談
料金:1名2,500円
※別途グリーンツーリズム傷害保険(1名207円/)への加入が必要
服装:動きやすい服装・靴・軍手
開催場所:町内の山
期間:3月~11月
注意事項など:
・体験前に注意事項をお伝えします
・事前に蜂アレルギーについてお伺いします
・ヘルメット着用をお願いします(現場配布)
南三陸BIOについて学ぶだけでなく、取り組みに参画している宿泊施設を利用しませんか?自らも循環の輪の中に加わってみることで、生ゴミやし尿などの有機廃棄物が循環する社会をよりリアルに感じ取ることができます。
「下道荘」は高台に建ち、窓の外には志津川湾を一望できる宿泊施設です。
若旦那はホタテやワカメを育てる現役漁師。若旦那がこだわりの食材で作る料理が美味しく、南三陸BIOで生成された液肥を利用したお米作りもしています。
下道荘|素材にこだわる漁師の宿
所在地:宮城県本吉郡南三陸町志津川字袖浜146-3
チェックイン:14時30分
チェックアウト:10時
客室数:12室(和室 12室)
WiFi:あり
南三陸の内陸に位置する「南三陸まなびの里 いりやど」は、宿泊もできる研修施設です。南三陸産の杉材を使用した館内は杉の香りが心地よく、地元食材をふんだんに使った本格的なお料理もいただけます。
プロジェクターやマイク、ライブ配信用スタジオなども完備しているほか、オーダーメイド団体研修も受けつけています。
南三陸まなびの里 いりやど
所在地:宮城県本吉郡南三陸町入谷字鏡石5-3
チェックイン:15時
チェックアウト:10時
客室数:30室(和室 8・洋室 16・その他 6)
WiFi:あり
平成11年に廃校になった小学校の校舎をリノベーションして生まれた「グリーンツーリズム体験<校舎の宿>さんさん館」。昭和前半に建てられた木造校舎の趣をそのまま残した、懐かしい雰囲気の施設です。
南三陸の里山地区にあたる入谷の家庭料理も美味しく、野菜や果物の収穫や種まき、山菜採りや田植えなど、季節ごとの体験プログラムは全部で約100種類用意されています。
グリーンツーリズム体験<校舎の宿>さんさん
所在地:宮城県本吉郡南三陸町入谷字山の神10-1
チェックイン:15時
チェックアウト:10時
客室数:9室(和室 3・洋室 3・その他 3)
WiFi:あり
SDGsを意識した社員旅行を計画するなら、旅行中のランチや購入するお土産にもこだわってみませんか?南三陸では、環境に配慮した地産地消ランチや、環境に配慮して育てた牡蠣の購入をすすめています。
SDGsの視点から飲食業界が抱える課題の一つが、温室効果ガスの排出量の多さです。
地球温暖化の原因とされている温室効果ガスですが、畜産業では飼料の生産や輸送、糞尿の処理、さらに牛のゲップなどにより大量の温室効果ガスが排出されているのです。世界全体の温室効果ガス排出量の14.5%を、畜産業が占めているという研究結果も報告されています。
そこで南三陸では、畜産業により作られる食材ではなく、地元でとれる海の幸・山の幸を使用したランチプラン「南三陸お宿御膳」の提供を始めました。
南三陸お宿御膳を提供しているのは「<校舎の宿>さんさん館」「津の宮荘」「ながしず荘」の三ヶ所で、要予約。「さんさん館」では、ヴィーガンやハラルメニューにも対応しています。
グリーンツーリズム体験<校舎の宿>さんさん館
所在地:宮城県本吉郡南三陸町入谷字山の神10-1
利用時間:12時〜12時30分
所要時間:60分
津の宮荘
所在地:宮城県本吉郡南三陸町戸倉字合羽沢34
利用時間:12時〜12時30分
所要時間:90分
ながしず荘
所在地:宮城県本吉郡南三陸町戸倉字長清水30-1
利用時間:12時〜14時
宮城県漁協志津川支所の戸倉出張所がASC認証取得した裏側には、ただ漁業を復興させるだけではなく“海の環境に配慮した復興のあり方”を目指した漁師たちの想いがあります。
自宅でこの牡蠣を食べながら、自分の暮らしや会社について見つめ直し、何ができるか思いを巡らせる。南三陸サステナブルツーリズムの締め括りにぴったりです。
■南三陸町内での購入可能場所
松岡水産
住所:宮城県本吉郡南三陸町戸倉字長須賀18-5
定休日:不定休
時間:9時~17時
電話:0226-25-8762
南三陸町の漁業や林業のあり方、資源を町内で循環させる取り組み、行政・企業・町民が「森里海ひと いのちめぐるまち南三陸」という同じヴィジョンを持ち協力し合っている関係性からは、学ぶことがたくさんあります。東日本大震災の被災地学習と組み合わせるプランもおすすめです。
さらに、ワーケーションの呼び込みにも力を入れるなど様々な関わり方を提案する南三陸町には、繰り返し訪れる人も多くいます。ぜひ一度、足を運んでみてください!
〈 南三陸町が社員旅行・研修におすすめな理由 〉
●SDGsの課題解決に向け、多くの先進的な取り組みを行っている
●牡蠣養殖で日本初の国際認証ASCを取得している
●林業で宮城県内初のFSC認証を取得している
●循環型社会の核である「南三陸BIO」についても先進事例を学べる
●ラムサール条約に登録された志津川湾は、藻場としては日本初の登録湿地
●行政・企業・町民が共通のビジョンを持ち一体となって取り組んでいる
●南三陸町では旅行の資料にと、地域のサステナブルな暮らしを紹介する冊子「いのちめぐる南三陸」を無料で配布中!
「いのちめぐる南三陸」請求はこちら→ https://wp.me/pctmfv-127j
◼︎取材協力・写真提供
一般社団法人 南三陸町観光協会
所在地 宮城県本吉郡南三陸町志津川字袖浜29-7 2F
電話 0226-47-2550
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