「働き方改革」がすすみ、それぞれのライフスタイルに合わせた雇用形態や勤務の仕方を模索する企業が増えています。リモートワークもその一つ。
前編では、リモートワークについての解説とリモートワーカーである白石さんにインタビュー。実体験からのメリット・デメリットについてもお話いただきました。
後編では「社員旅行net」のサイト制作や運営に関わるリモートワーカー、テレワーカー(フリーランス)にもインタビュー。それぞれが感じているメリット・デメリットなどをまとめてご紹介しましょう。
初めは時短で勤務していましたが、お子さんのお迎えが大変ということもあり、在宅勤務に切り替えたM.Oさん。
小学校は行事が多いこと、学童保育の時間内にお迎えに行くため、仕事を中途で切り上げるなど慌ただしい日々でした。
また、少しずつ大きくなると放課後、仲のいいお友達と遊びたいということも増えてきます。『学童保育に行きたくない!〇〇ちゃんと遊びたい』そんなお子さんの気持ちも考え、在宅勤務を選択したそうです。
『毎朝、システムチームでPC会議を定例化。さらに適宜、プロジェクト管理ツールやチャットを利用するなど、コミュニケーションはしっかりとれて、スムーズに進行できています』
東京都在住、年齢39歳。
4人家族で夫(40代)、中学生の長男と小学生の次男の2人の子ども。
6時~8時 起床・朝食 家族を送り出した後に家事(掃除・洗濯など)
9時~17時30分 仕事
※15時~16時子どもの帰宅に合わせて休憩と夕食の準備をします。
18時~ 習い事の送迎
21時~ 仕事のまとめ
普段は仕事に集中できるように、自宅の2階(寝室兼仕事部屋)で作業しています。打ち合わせはPCの前にいれば済んでしまうので便利。
子どもの学校や習い事の送迎があるため、なかなか家を離れて作業するというのは難しい状況です。いずれ手が離れたら、たまにはコワーキングスペースやカフェで仕事をするというのもいいなと思っています。
学童保育へのお迎え時間が迫ると、キリのいいところで作業を切り上げなければなりません。仕事(システムエンジニア)の性質上、トラブルがあるとさっと帰れないことも・・・。
その点、在宅なら時間のコントロールがしやすいので、焦らず作業を進めることができるようになりました。
通勤中は5時に起きないと間に合わなかったのが、いまは6時起床でも余裕です。その点、疲労感が大幅に減りました。メリットは以下の通り。
いつまでに終わらせる、というスケジュールを守るためにはどうしても休日作業が発生してしまうというOさん。
通勤なら土日祝日は会社に入れないので、作業することはできないのですが、在宅だといつでも仕事できてしまうのでありがちですね。
『学校の行事や子どもの習い事などで、平日の昼間、時間がとられることもあるので、そういうときも夜遅くに作業したり、休日を使うことになります』
『同僚と定期的に飲みに行きたい、という人には寂しいかもしれません。その反面、子育て中などで時間に制約がある人にとってはありがたい働き方かなと思います』
『社内はもちろん、社外の方との交流が無くなるため、コワーキングバスツアーみたいなイベントは是非参加してみたいです。運動不足解消、気分転換にも最適かと思います。』
Oさんにとって、リモートワークは“子育て中でも焦らず仕事に集中できる「働き方」”になったようです。
会社設立当初からWebデザイナーとして勤務してきたKTさん。初めは通勤していましたが、不規則な勤務をしている奥様と子育てのために在宅勤務に切り替え、10年以上に渡り、家事・子育てを担当しています。
『基本はメールでのやりとりで問題なく作業が勧められます。細かい確認が必要な時に電話で打ち合わせすればOK。新しいプロジェクトなど、しっかり打ち合わせが必要な時は出社してすり合わせすることもあります』
東京都在住、30代。4人家族で妻と2人の子ども。
9時30分~20時 仕事
※空いた時間で家事、育児(習い事送迎、勉強チェック等)
子どもがまだ小さい(保育園と小学生低学年)ので、自宅で仕事しています。ちょっと手が空いたときにさっと作業を進められるので便利。
会社までの通勤時間やラッシュでへとへとになって、家に帰ってから家事や育児。妻がシフト制で働いており、夜勤もあります。共働きを続けるなら、僕の方が在宅勤務をした方がいいと判断してリモートワークにしてもらいました。
通勤にとられる時間が不要で、その分有効活用できます。また、在宅なので服装も自由(笑)。
ちょっとした隙間時間でも、作業を進められるので便利です。
『子どもの送り迎えや学校の用事で外出する以外はほとんどPCの前に座りっぱなし。運動不足を実感しています。
また、誰とも会話しなくてもいいので家族以外とコミュニケーションをとる機会が失われています』
『自己管理ができて、仕事をする時間が途中で中断されてもコツコツ取り組める人が向いていると思います』
逆に、プライベートと仕事の時間を分けられない人は向いていないのでは、とおっしゃっていました。
『今のところ、社会との交流機会が足りていないとは感じていません』
今後もシェアオフィスやコワーキングスペースなどを利用する予定はないとTさん。
K.Tさんにとって、リモートワークは“ライフスタイルにフィットした効率的な「働き方」”になっているようです。
大学を卒業後に就職し、フルタイムで勤務してきた編集部のM.Iさん。サイトの制作・運営に携わり、ディレクター兼ライターとしてもキャリアを積んできました。
その後、結婚し、ご主人の勤務先が地方に。お互いの中間地点に新居を構え、遠距離通勤を続けていました。しかしながら心身への負担は大きく、在宅勤務へ切り替えたMさん。
『仕事内容もライティング専門に切り替え、いろいろな媒体を担当させてもらっています。ジャンルの違うテーマで記事を書けるので新鮮です』
茨城県在住、年齢26歳。ご主人と二人暮らし。
10時~19時 仕事
19時~21時 夕食の準備他、家事タイム
21時~24時 自由時間
仕事場は自宅のダイニングテーブル
『起きてすぐ仕事に取りかかれること。仕事が終わった後は、すぐに家事や趣味に取りかかれるので、ロスタイムが少ないのがメリットです』
茨城から都内のオフィスまで通勤するのはかなりの重労働。その負担が大きく軽減されたことはかなりのメリットにつながったそうです。
また、会社にいると電話や来客の応対、隣席の人とついおしゃべりするなどに時間をとられるため、仕事がとぎれとぎれになりやすかったといいます。
メリットは以下の通り。
在宅で仕事を初めて気が付いたことは『デスク環境はオフィスの方が整っている』ということ。
適度に回りに人がいた方が、仕事に集中できる(集中タイムに入るまでが短い)こと。また、それなりに仕事環境を整える(長時間座ってても疲れないイスを買うなど)とお金がかかるということを実感したそうです。
まだ子どもがいるわけではないので、仕事のやめ時がわからないということも。
『会社の人とミュニケーションを取る方法が、スラックなどのメッセンジャーのみ。一緒に仕事をしている人の状況が分からず“忙しい時に連絡してしまって迷惑だったかも”と不安になることがあります』
ずばり向いているのは『自分でスケジュール管理ができる人』とMさん。
『特に締め切りのない仕事だと絶対さぼるので、ちゃんと決まっている仕事を振ってもらえるような職種(立場)なら向いてると思います』
逆に不向きな人は「人とコミュニケーションをとりながら仕事を進めていきたい人」「テレビやゲームなど、家でできる娯楽が趣味の人」だそう。
『私はもともとテレビみないので仕事中の誘惑というのがあまりなかったのですが、友人に聞いたら「家で仕事したら絶対Youtubeとか見ちゃう」とのことでした』
人との交流は予想以上に少なくなるとMさん。
『最近は夫としか対面で会話しない毎日…。自分で意欲的に動かないと新しいことを学ぶ機会というのも減ってきてしまうので、仕事に関する書籍や勉強ツールが充実したコワーキングスペースがあれば利用してみたいです』
せっかくPCひとつで仕事ができる環境にあるので、家以外で仕事ができるかどうかも試してみたいものの、日々の生活に追われてついつい後回しになっているそうです。
コワーキングバスツアーのように、別の環境に連れて行ってくれて仕事ができるのは魅力的。ツアーに参加して、別の場所でも仕事できるな!という実感を持てたらいろんな場所で仕事してみたいと思っているそうです。
最初は「社員旅行net」のシステム開発を請け負う“外注先”として、フリーランス(自営型のテレワーク)の立場で働いていたK.Tさん。
その後、契約形態を変更し(1)で紹介したOさんとともにリモートワーカーとして一緒に仕事をすることになりました。
K.Tさんが在宅勤務を始めるきっかけになったのが『子どもが病気がちだったので、いつでも病院に連れて行ける環境が欲しかったから』だそうです。
茨城県在住、年齢47歳。奥様と2人の子どもの4人暮らし。
7時15分~8時15分 長男を学校に送る
8時30分~17時30分 仕事
17時45分~18時45分 長男のお迎え
19時~21時 長男の塾等の送迎
もともと在宅で仕事をしてきたので、専用のデスクがあります。
『ともかく通勤する時間のロス、ストレスがないのがメリットです』
通勤時間がそのまま作業時間になるメリットは大きいとK.Tさん。
『急な仕事(雑用を含む)を突然振られるということが少ないので、仕事に集中できます』
また、インフラ整備が進み、ネット環境があればタクシーやバス、電車で移動中でも仕事ができるのもメリット。
また、K.Tさんにとって『リモートワークのデメリットは特になし!』とのことでした。
向いているのは『コミュニケーションがちゃんと取れる人』とK.Tさん。
逆に不向きな人は「自分だけで物事を解決できると思っている人」だそう。独りよがりではリモートワークを続けていくのは難しいということですね。
コワーキングスペースに魅力を感じるてはいるものの、市内に少ないので、利用する機会がまだないというK.Tさん。
『コワーキングバスみたいなツアーがあったら参加してみたいのですが、都内から地域へというのであれば、そこまでの移動時間がかかるのでメリットが感じられない』
「社員旅行net」を運営する会社の正社員として勤務していたことがある塩原亜希子さん。ディレクター兼ライターとして活躍してきましたが、Webデザイナーへ転身し、リモートワーカーに。
その後、キャリアを重ねながら現在はフリーランス(自営型のテレワーク)として活躍しています。
塩原亜希子さんがリモートワークをを始めるきっかけになったのが『将来的にリゾート地に移住して、フリーランスで働きたいという夢と、全国行脚しながら現地のデザインをしてみたいという野望があった』からだそうです。
埼玉県在住、年齢40代。「社員旅行net」システムチームをたばねる夫と2人暮らし。
10時~13時 仕事(合間にちょこちょこ家のこと)
13時~14時 ランチ
14時~19時 仕事(合間にちょこちょこ家のことやおでかけ)
19時~21時 夕食準備、食事
21時~23時 立て込んでいるときは仕事、なければフリータイム(飲み会だったり趣味の太鼓・阿波踊り・ゴルフの練習だったり)
23時~24時 夫帰宅、これみよがしに家事をしてみる
1時半 就寝
自宅での作業は全体の7割という塩原さん。残り3割はWebデザインの講義を担当している学校、旅行先、コワーキングスペースでも仕事をしているそうです。
自宅作業は『仕事のリフレッシュ感覚で家事ができる点がよいです。行きつけの美容院やエステ、歯医者なども近所なので、作業の合間にパパっと行けるのが便利。
週末は混んでいるような場所でも平日は空いているので、仕事が立て込んでいないときを見計らって行ったりしています』
また、月に何度かWEBデザインの講義をしに都内・神奈川へ出かけているという塩原さん。
『どの日も授業が2~3時間なので、次の予定(打ち合わせとか飲み会とか)のつなぎで、学校の施設を使わせていただいて作業しています。
学校にいると他の先生(同業者)とのつながりができて仕事につながることもあるし、ちょっとした相談に乗ったり乗ってもらったりできるのもよいです。真新しい情報に出会えることもしばしば。
フリーランスになると、新しい技術の情報集めは死活問題なので、そういう場所としても助かっています』
さらに旅行先でも半日仕事・半日観光というようにリモートワークしているそう。
『作業環境が整っている宿泊先を選んでいます』
また、コワーキングスペースは、カフェよりも便利だといいます。
『PCを複数台利用するような打合せなどで利用しています。モニター無料レンタルやホワイトボードがあったり・・・。打ち合わせをするならカフェよりコワーキングスペースですね』
『往復2時間の通勤時間と満員電車によるストレスがなくなったのは大きいです』
風邪をうつされる機会が激減。また、悪天候や酷暑極寒などの日に頑張って出勤する必要がなくなったことはメリット大と塩原さん。
自分の好きなように時間が使えること(拘束時間がないのはとても大きい)、好きな環境で仕事はできるのはうれしいとのことでした。
また、フリーランスになることで『納得のいかない案件はあえて請けないという選択肢ができた』そう。
いろいろなスタンスでフレキシブルに仕事をしている人に出会えるし、自分の仕事の仕方を能動的に選択できるようになったとおっしゃっていました。
自分で意識的に新しい情報を取りにいかないと、時代に乗り遅れていても気づけない可能性があるのが心配と塩原さん。
また『ヘタをすると1日中家にいるので、千歩程度しか歩いていない日もあるかもしれない。運動不足になりがちな点』もデメリットと感じるそうです。
また、フリーランスならではの悩みも。
営業の一環としていろいろな場所に顔を出しすぎると、実作業が間に合わなくなる恐れを抱えている(1人で営業も制作も全部やらないといけないので)。
また、信頼できる制作パートナーを常に見つけておかなければいけない(案件が飽和状態になったり、急に体調や家の都合で作業が滞りそうになった場合のことを考えていないといけない)とのこと。
自由な反面、自己管理がとても大切ということですね。
向いているのは「自分で何でも決められる決断力がある人」「能動的な人」「フレキシブルな人」「コミュニケ―ション能力のある人」を上げている塩原さん。逆に向いていないのは「受動的な人」だそう。
特にフリーランスになると『今まで自分がしてきたような仕事の範囲以外のジャンルの仕事がたくさん舞い込んできます。
WEBデザイナーだったのに、新規オープンのカフェの店舗装飾デザインをしたこともありますし、選挙ポスターを作ったりすることもあります。
不動産会社の物件入力画面のインターフェイスデザインをしたりすることもありますし、街を挙げたイベントのイベント名を提案してほしいと言われることもあります』
これからフリーランスを目指そうと考えている方はぜひ、参考になさってくださいね。
『情報収集は常に必要性を感じているので、教えている学校での同業者との情報交換や、気になるワークショップがあれば積極的に参加したりなどしています』
コワーキングスペースを利用した際に、あまり周りにいる人と交流したことがないので、利用者同士の交流がどんなきっかけで始まるのか興味はあるという塩原さん。
実は塩原さんもコワーキングスペース「ベイカンシーオフィスゴタンダ×勝浦市が連携して実現したコワーキングバスツアーに参加。その感想もうかがってみました。
『先日行った勝浦のコワーキングバスは面白かったです。移動中も移動先でも仕事ができるというのは新鮮でした。
将来的に2週間ぐらいで海や山のリゾート、都会みたいにいろんな場所で働けるのは、私の野望と同じ(笑)今後さらに内容が練られて魅力的なツアーになっていくことを期待しています』
編集部I自身、子どもの妊娠・出産を機に25年以上前にリモートワーク(前職)を体験しました。
当時はまだスマホやチャット、PC会議もない時代。会議や打ち合わせなどで出社しなければならないときは大変だった記憶があります。
それでも「子育てしながら仕事を続ける先駆者になってほしい」という会社からの要望で、切り込み隊長になりました。家族や友人、近所の人、会社の同僚、保育士さんなど、大勢の人たちの支援でここまでやってこれたなと実感しています。
キャリアややる気のある人たちが仕事を続けられる社会。ライフスタイルに合わせた働き方を選択できる社会。
リモートワークは選択肢の一つになりつつあると実感しました。
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