個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できる社会を目指し、スタートした「働き改革」。前編では最近注目を集めている「コワーキング」やさまざまな働き方について解説しました。
後編では「コワーキング」を実体感できる「バスツアー」に、実際に参加した編集部のレポートを中心にお届け!そこで感じたメリット・デメリットなども率直にお伝えしたいと思います。
コワーキング(Coworking)とは、働く(Working)ということばに、”Co=共同”を意味することばがつけられた造語。
コワーキングスペースはシェアオフィスにちょっと似ていますが、個室でそれぞれがモクモクと働くのではなく、オープンになっているところがポイントです。
フリーランスや起業家、リモートワークなどを行っている人たちがゆるやかにつながり、協力し合いながら働くこともできる。
今回編集部が参加したバスツアーは、各地域(地方)にあるコワーキングスペースへ移動中も働くことができる、という実証実験として企画されたものです。目的地は千葉の勝浦にある清海学園。
コワーキングスペース「ベイカンシーオフィスゴタンダ」を運営する小山拓さん(株式会社トゲル代表)と勝浦市が連携して実現したツアーです。
ツアーには、勝浦で頑張る企業「ネクストレベル(Nextlevel)」訪問や、勝浦の魅力を感じられるグルメ・スポットなどにも立ち寄る予定です。
今回のバスツアーは旅行会社JTB千葉支店が手配。当日チャーターされた貸切バスは、TCB観光さんのプレミアムな大型観光バス・トイレ付タイプです。
バス車内でもコワーキングスタイルを楽しみたいということで、後部座席が回転するサロンバス。各自スペースをゆったりと座れるよう、定員数34席のところ、10数名で貸し切るという贅沢さです。
もちろん、バス車内でつながるフリーWi-Fi、電源も準備されていました。
ツアーのスケージュールは以下の通り。
2019年9月26日(木) 日帰り
【スケジュール】
09:00 集合:五反田のコワーキングスペース「ベイカンシーオフィスゴタンダ」
09:10 バスの停車場所に移動
09:20 五反田発<サロンバス車内で仕事可能>
11:20 勝浦市でがんばる企業:ネクストレベル社の見学
12:15 昼食(ネクストレベル社の方と情報交換)
13:30 風光明媚なシェアキャンパス清海学園でリモートワーク体験
勝浦市の地域の課題も学べます<銭湯、民宿、アパートの経営課題など>
16:00 勝浦市出発<サロンバス車内で仕事可能>
18:00 五反田着
早速、バス車内でオシゴト開始です!と、ここでいくつか問題点が発覚。それは以下の2つです。
観光バスの場合、前の座席にテーブルがついています。しかし、その使い方はちょっとした飲み物を置いたり、お弁当を広げたりするのが目的。
私が持参したノートパソコンが大きかったのも事実ですが、テーブルに乗せて作業は無理・・・。膝の上で開いて作業することにしました(他の人もそうだったような・・・)。
最近の高速バスでは、ビジネスマンが移動によく利用しているため、PC作業ができる仕様になっているものが増えています。
つい先日、福島から新宿までウィラーの高速バスを利用しましたが、上の写真のように安定感のある広いスペースを確保したテーブルでした。
こういった仕様のバスは「特注(例外)」。貸切バスではちょっと厳しいのが現状です。
と思っていたら、このツアーの後早速「膝置きテーブルを購入して、改善しました」との連絡を小山さんから頂きました!さすがです。
車に酔いやすい人は、バスの中でPC作業なんて論外。私は比較的酔わない方なので、あまり気になりませんでしたが、他の参加者からは「酔った」という声がちらちら・・・。
電車に比べてバスは、カーブや路面の状況により、ある程度の揺れは仕方ありません。
時々、窓から遠くの景色を見る。あらかじめ酔い止めを飲むなどの対策は必要と思いました。
途中、トイレ休憩をはさんで勝浦に到着。まずは勝浦でウェットスーツの企画・製造・販売を手掛ける「ネクストレベル(Nextlevel)」さんを訪問しました。
ウェットスーツは、サーフィンやダイビングをされている方ならおなじみです。中でも勝浦は“いい波が押し寄せる”、日本有数のサーフスポットがあるエリアとして知られています。
こちらは勝浦・部原海岸の真ん前という立地。
オープンテラスからは白波を立てて押し寄せる海が見えます。サーファーにとっては仕事が手につかないような眺め。
建物はオフィス兼ウェットスーツの制作工場となっています。それでは順番にご紹介していきましょう。
プールや海でから上がった後(もしくは泳いでる間)、寒い思いをした経験ってありますよね。ウェットスーツは、海に入ったり、陸に上がったとき、体温の低下を防ぐ「保温性」と、岩やボードに接触したときの衝撃を吸収する役割も担っています。
特に保温性を維持するには、フィット感がとても大事。また、サーフィンなどの場合、ウェットスーツがだぶついていたらパフォーマンス性が低下してしまいます。
サーファーやダイバーは、オーダーメイドでウェットスーツを作るのが一般的。
「ネクストレベル(Nextlevel)」ではウェットスーツ注文後に採寸。そのサイズに合わせた型紙を作成するところからスタートします。
編集部Iも、昔ダイビングをやっていたので、ウェットスーツをオーダーメイドで作ったことがあります。
クローゼットにつるされている姿を見て「自分の抜け殻」と思った記憶が・・・。
型紙を見ていると、実に細かいパーツに分かれていて、それを一つ一つ縫製、接着して作るというのがわかります。
デザインに合わせて必要な生地を用意し、型紙に合わせて裁断していきます。
裁断された生地は縫製・接着され、少しずつウェットスーツへと変貌。
出来上がりを待っているお客様のもとへお届けします。
こちらの会社に勤めるスタッフ、プロのサーファーやサーフィンをこよなく愛する方々がほとんど。お昼の休憩時間になると、たちまちウェットスーツに着替えて、目の前の海へGo!
趣味が仕事に、仕事が趣味に。自分の作ったウェットスーツの着心地をチェックし、改良に役立てることもできます。
都内で働いていると、お昼休みや仕事終わりにちょっと波乗り!というのは不可能。勝浦という職場だからこそのメリットですね。
<Information>
ネクストレベル(Nextlevel)
住所:千葉県勝浦市部原1951-8
問合せ:0470-67-5850
勝浦は海の幸・山の幸に恵まれていることで知られています。中でも勝浦タンタンメンは、ご当地グルメとして有名。
海に潜って仕事をする海女さんや漁師さんたちが、冷えた体を温めるご当地メニューとして創意工夫されたラーメン。
通常の“タンタンメン”は玉ねぎとひき肉を使ったゴマベースですが、勝浦タンタンメンは醤油ベースのスープにラー油が多く使われているのがポイント。お店によりニンニク、ニラ、ネギを使ったり、味噌ベースのスープがあるなど、個性があります(「熱血!!勝浦タンタンメン船団」ホームページより引用)。
今回のツアーでお邪魔したのは、Nextlevelさんのお隣にある「大勝軒next勝浦ビーチ店」。つけ麺の生みの親として有名なあの大勝軒です。
毎朝打ち立ての自家製麺に地元の食材で作り上げたスープ。「勝浦タンタンメン(地域団体商標)」正規店です。
一つは名物「勝浦タンタンメン」。辛いのが苦手な方向けにもう一つは普通の「醤油ラーメン」。
大勝軒では、スープが洋服にはねない様に、紙製エプロンも用意してくれます。女性にはうれしい配慮。
私は辛いのが苦手なので普通の醤油ラーメンをいただきました。「勝浦タンタンメン」を食べた方に感想を聞いたところ「めちゃめちゃ辛いけど、癖になる味!」とのこと。
ぜひ、千葉へ社員旅行にお出かけの際は、皆様の勝浦ご当地ラーメン、楽しんでみてはいかがでしょうか。
「清海学園」は、2018年3月に廃校になった清海小学校を、シェアオフィス&コワーキングスペースとしてリニューアルオープン。目の前は鵜原海岸という好立地でゆったりシゴトができます。
1階はコワーキングスペース、2階はシェアオフィスとテレビ会議室ルームを備え、体育館や音楽室もイベントでレンタル可能。
また、千葉県内のビーチのほとんどが「BBQ禁止」のところ、こちらのグラウンドで海を眺めながらBBQが楽しめるところもポイントです。
清海学園の施設を案内いただきましたので、ダイジェストに紹介していきましょう。
こちらは元職員室を改造。いくつかの島に分かれたテーブル席の他、窓際のセミブース席があります。
全席ハーマンミラー社のアーロンチェアを設置。長時間作業しても疲れないように配慮されています。
各席に電源があり、Wi-Fi環境も完備。27インチ4KHDRモニターも貸し出し可能。SEやWebデザイナー、映像クリエイターの方も作業ができるサービスを整えています。
<コワーキングスペース Information>
★ドロップイン利用(都度利用・予約不要)
オープン時間:11時~17時
利用料金:2時間より1,000円/人・終日利用1,800円/人
※月額会員は事前面談が必要です。詳しくは問合せを。
1つの教室を7つの個別ブースとして、パーテーションで区切られたシェアオフィス。
窓の外にはグラウンド越しに鵜原海岸が見えるブース。こちらは、月額会員専用となっており、利用料は1ブース2万円〜とリーズナブルです。
早朝からサーフィンを楽しんだ後、こちらに出勤してオシゴトも可能。また、週末ここで働き、土日は波乗り三昧がしたいという方にもおすすめだそうです。
法人登記として利用したい、勝浦に営業所や支店を持ちたいという企業さんもOK。実際に内覧した後、入居審査があるそうです。気軽に問合せてみては?
ドローン技術を習得するためには、広いスペースが必要。ということで、こちらのキャンパスでは、JUIDA(一般社団法人 日本UAS産業振興協議会)認定「千葉勝浦清海学園ドローンスクール」も開校中。
ロケーションも抜群なので、楽しく学べそうですね。詳しくはこちらのページをご覧ください。
教室から渡り廊下で移動できる体育館。社内イベントで運動会やスポーツイベントを楽しみたいときにおすすめです。
グラウンドもあるので、雨の日の場合の代替案として使うのもいいですね。BBQはこちらのグラウンドで楽しめます。
1日1組限定で校庭貸切キャンプもOK。学童や子ども会のお泊り保育にもぴったりです。
鵜原海岸の海は透明度の高さでも有名。その景観の美しさは「日本の渚・百選」に選ばれるほどです。
都内から車で約2時間程度、JR外房線「鵜原駅」から徒歩圏とアクセスも良好。
訪れた時は台風19号の爪痕が残されていましたが、穏やかで静かなたたずまいで落ちつけるビーチでした。
実はこちらのバス。行きはサロン仕様にするのを忘れていた、ということで通常のレイアウトで移動。ツアーメンバーが清海学園でコワーキングを体験中、バス会社の方がサロン席にチェンジしてくれました。
前列は通常の座席なので、オシゴトしたい人はそちらで続きを。交流したい人はサロン席へと移動して出発。
途中、道の駅に寄ってくださったので、お土産購入やおつまみ、ドリンクの調達もばっちりでした。
コワーキングスペース「清海学園」の気になった点、女性目線で大きく2つあります。
お手洗いが和式なのは、男性でもちょっとという意見もありました。
最寄りのJR鵜原(うばら)駅から徒歩15分なので、自家用車以外はちょっと不便。
仕事中、小腹が空いたから何か買い物したいという場合、どこに行けばいいのかわからない。夜遅くなったら人気も無くなるのでは?と気になりました。
電動アシスト付きのレンタサイクルポートがあって、駅などでそのまま返せるなら便利かも。
自動販売機でちょっとした軽食・スナックが買えるサービス、巡回式でミニスーパーが寄ってくれるなどあるといいなと感じました。
現在の会社に勤める前、●十年前に子育て中、リモートワークを体験しました。今のようにTV会議ができる環境ではなく、子どもを籠に入れて車で会社に出勤。
総務のスタッフに子どもをあやしてもらってる間、打ち合わせしたことがあります。
私の後に出産したデザイナーさんは、子どもを抱っこしながら会議に出席したこともありましたっけ。
そういう働き方を許容してくれた会社には感謝しかありません。現在では、インターネットを利用して、もっと楽にリモートワークできる。なんだか感慨深かったです。
地方にあるコワーキングスペースをもっと活用しやすくということで、バスツアーを企画し、移動中も楽しむ。他のリモートワーカーさんたちとの交流も楽しめ、ちょっとした社員旅行気分も味わえるのは魅力的です。
夏は高原で涼しく働き、飽きたら海辺へ移動、というように、気分次第で好きな場所で働けるなんて、いままで考えたこともありませんでした。
職種により、リモートワークが難しい人もいらっしゃると思いますが、こんな「働き方改革」なら悪くないと思う編集部でした。
この後、番外編として勝浦で視察した創業100年以上の銭湯「松の湯」さんが抱える課題の紹介と、応援の意味を込めて勝浦日帰り&1泊2日社員旅行プランを提案。そして、リモートワーカーへのインタビュー集を順次ご紹介していきます。こうご期待!
■取材協力・画像提供
ベイカンシーオフィスゴタンダ(VACANCY OFFICE GOTANDA)
住所:品川区大崎4-1-7 1F/2F
問合せ先:080-7000-0129
受付時間:平日 9時30分~21時30分/土曜 11時~18時、日祝日はクローズ
シェアキャンパス清海学園(旧 勝浦市清海小学校)
住所:千葉県勝浦市鵜原142-2
問合せ先:043-306-8456
受付時間:11時〜18時 (不定休)
★2019年9月26日開催の「コワーキングバスツアー」にご参加の皆様!お写真ありがとうございます★
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