新在留資格「特定技能」を盛り込んだ出入国管理法を改正し、2019年4月から施行している日本政府。「社員旅行net」を運営しているわが編集部でも、バングラディッシュのカビルが、システムエンジニアとして活躍中です。
日本語が堪能ではないカビルと交流を楽しむため、日帰り社員旅行を実施。第1回目はその時の体験談をご紹介しました。2回目の今回は、ムスリム社員と一緒に働く際の注意点、社員旅行・社内イベントを企画する場合のポイントなどをまとめてご紹介します。
記事の最後では、カビルへのインタビューもお伝えしますよ!
日本は多種多様な宗教を柔軟に受け入れてきた歴史があります。その反面、一神教であるキリスト教やイスラム教などへの知識や理解が足りていないことも。
ここでは基本的なムスリムへの理解や知識を深め、一緒に働く職場の仲間としてどんな点に配慮したらいいのかを考えたいと思います。
ムスリムはイスラム教を信仰している人々のことをいいます。ムスリムは世界の約1/4を占めるといわれ、キリスト教・仏教とともに世界三大宗教でもあります。
キリスト教ではイエス・キリスト、イスラム教ではアッラーが唯一絶対神。仏教は仏(ブッタや真理に目覚めた人、如来)になるための教え。そういう意味で、仏教は1人の神的存在を崇めるというよりは、自らが宇宙の原理を悟ることが重要とされています。
イスラム教は生活全般について規範がありますが、国や地域、文化、宗派、個人によって異なります。日本人にとていちばん難しいのがその生活習慣を理解することかもしれません。
一緒に社員旅行をする場合、社内イベントで交流する場合に、最も配慮が必要なのが「食習慣」と「礼拝」になります。
ムスリムが来日して最も困るのが食事。料理名は書いてあっても、材料や成分の表示がないため、食べていいかどうかの判断が付きません。また、問題になるのが礼拝できる場所。カビルにたずねたところ礼拝の時間は以下の5回だそうです。
お祈りの時間は、太陽の位置で決まるそう。このため、毎日微妙に違うため、お祈りのためのカレンダー(アプリ)があります。泊りがけで出かける場合は、きちんと礼拝ができるような配慮が必要です。
すでにご存じの方も多いかもしれませんが、「豚肉」「アルコール飲料」がNGです。
豚肉そのものはもちろん、豚由来成分もダメ。例えば、ベーコン・ソーセージなどの加工食品や豚のエキス・油脂(豚骨スープやラードなど)ももちろんのこと、添加物や調味料にも注意が必要です。
日本の料理には数々の添加物が使われていて、パンやケーキに使われるショートニング、乳化剤も豚由来。ゼラチンを使うゼリーなども避ける必要があります。
さらに調味料に含まれるアルコール類、和食で多用するみりん・料理酒にも注意ですよ。
豚以外の肉についても、イスラムの教えに則った方法で「と畜・加工処理」されたものであることが条件。アラーの神へ祈りを捧げながら、動物に苦痛を与えないように処理するといった細かいルールがあります。
牛肉や鶏肉、羊、山羊などは口にしても大丈夫ですが、ハラール認証を受けていることが必要です。
年に1度、夜明けから日の入りまで断食・斎戒(心身を清め、タブーを犯さないようにすること)をする断食月という期間があります。断食(アウム)は約30日間続きます。まったく何も食べないというわけではなく、日が落ちてからお腹に負担をかけないスープなどを口にするそうです。
断食月は毎年異なりますが、2019年は5月でした。この時期は社員旅行や職場旅行を避けるようにするといいでしょう。
またそれ以外にも、イスラム教で定められた宗教的な祝日「イド・アル=フィトル(Eid Ul Fitr)」「イド・アル=アドハー(Eid Ul Adha)」という大きなお祭りがあります。日本のカレンダーにはありませんが、イスラム教徒にとっては大切な日であることを覚えておきましょう。
イスラムの教えでは、異性との接触は望ましくないというものがあります。
ドバイで日本人カップルが、結婚していないのに性交をした罪と、飲酒の罪で「有罪判決」を受けた例がありました。ドバイは中東の中でも寛容といわれ、観光客が人前で肌を露出していても注意されることはあまりありません。
その反面、結婚していない男女が人前で「ハグをする」「キスをする」などには厳しく、有罪判決を受けると最短6か月間の拘束になるとか。相手が異性の場合、気軽に肩をたたいたり、握手するなどは控えるようにしましょう。
また、泊りがけで温泉旅行する場合、大浴場でみんな一緒にというのは避け、貸切風呂を予約してあげるなどの配慮もお願いします。
日本語や日本の風習、文化に慣れていないムスリムの人たちに対し、最も大切なことは彼らの習慣や国での暮らしについて「興味を持ち、理解しようと努めること」。
彼らの立場に立って、考えることが重要です。
「ちょっとぐらいお酒を飲んでもいいだろう」「ちょっとぐらいルールを破ってもいいじゃないか」など、“日本的な感覚”で無理強いすることをしてはいけません。
社員旅行や社内イベントを企画する上で、「食」「礼拝」についての最大の配慮をお願いします。
最後にわが社でSEとして活躍中のカビルにインタビューしました。日本に来るきっかけや実際に働き始めての感想、困ったことなどまるっとご紹介しましょう!
A.システムエンジニアとして磨いてきた技術や知識を、日本ならもっと活かせる、より成長できるのではないかと思ったからです。
バングラディッシュと日本は、文化交流や経済協力などを通じて絆があります。
日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、「JICA(ジャイカ・独立行政法人国際協力機構)」がありますが、バングラディッシュへの支援に積極的に取り組んでいました。
私が日本でエンジニアとして働くためのトレーニングプログラムをJICAで受けていた時、いまの職場からオファーをもらい、「働きやすい職場」と感じたことが入社のきっかけです。
A.海外に来たのが日本が初めて!天気や街並み、文化、生活習慣などさまざまな違いに戸惑いました。
バングラディッシュでの研修期間中に、日本について、企業について学んでいましたが、想像を超えることが多かったです。
ただ今の職場は、外国人を自然に受け入れ、バングラディッシュについて興味を持ち、積極的に話しかけてくれるので、とてもうれしかったです。
社長と面接した際に、ムスリムとしての生活習慣なども理解を示してくれ、柔軟に対応してくれていることもありがたいと感じています。
A.とても寒い(笑)!それから地震にびっくりしました。
会社で住まいを見つけてくれたのですが、道路や家が全部同じに見えて区別がつきません。ハラルフードを購入するお店やレストランに行くなど、目的地までスムーズに移動するのが少し大変でした。
出社して3日目、会社への行き方がわからず、迷子になってしまったことも。クレジットカードをなくしてしまいましたが、いまだに見つかっていません。
日本語がまだあまり話せないとき、荷物をバス停に忘れたときはどうしようかと途方にくれました。それでもなんとか見つけ出すことができてほっとしています。
A.食文化と満員電車でしょうか。
いままで生の魚を食べるという習慣はありませんでした。実際にお刺身を食べてみて、とてもおいしくてびっくりしました。
それから日本の電車は時間厳守で運行されています。そしてたくさんの人が電車から乗り降りするので、満員電車を利用することが最も困難なことでした。
あと、日本のアニメ文化にもびっくり。日本人がアニメキャラクターに夢中になっているのも驚きです。
A.お寿司、刺身、ラーメンはおいしいです。
それから、日本のコンビニのコーヒーが大好きです。安くておいしいと思います。
また、ハラル対応しているバーベキューのお店やカワイイ・モンスター・カフェ、カラオケ・パセラ、社員旅行で行った権八、セカイカフェに行ったことがあります。
A.東京ディズニーランドです!
今回の社員旅行では行けませんでしたが、行ってみたいところの筆頭に上がります。
それ以外には、お台場で自由の女神を見てみたいですし、富士山、沖縄などいろいろなところに行けたらいいなと思います。
できれば日本各地のお祭りなども体験してみたいです。職場の仲間と一緒に東京のお祭りを見に行くとか、そういうイベントがあると嬉しいと思います。
A.あります!年に2~3回、職場の仲間と長めの旅行に行きますよ。
バングラディッシュには6つのシーズン(夏、雨、秋、晩秋、冬、春)があります。
冬には森林やビーチでのキャンプツアーがあります。夏には観光やピクニック、冬の真ん中ぐらいにツアーに出かけることもあります。
A.バングラディッシュは自然豊かな国です。すべての国の女王とも呼ばれています。
川の国とも呼ばれており、大湿地帯であるスンダルバン(Sundarban)と呼ばれる最大のマングローブ林もあります。
また、最も特別な場所として「コックスバザール」という世界で最も長く、美しいビーチがあります。ハネムーンにはおすすめですよ!
バングラディッシュの国魚で、ニシン科のイリッシュという魚がとても有名。揚げたり、カレーの具として使います。
また、バングラディッシュではどこでもマンゴーが食べられますが、ジャックフルーツがおすすめです。フルーツガムのような甘い香りがして甘くておいしいですよ。
もし、バングラディッシュを旅するならぜひ、6シーズン6回訪れることをおすすめします。各季節ごとにたくさんのフェスティバルがあり、すばらしいバングラディッシュの自然を楽しめます。
もし社員旅行や海外視察などでバングラディッシュを訪れるなら、ぜひ「社員旅行net」を利用してみてください(笑)。
<カビルのプロフィール>
Kh Mohaimenul Kabir(カビル・モハイメルヌル)
ダッカ国際大学(Dhaka International University)でコンピュータサイエンスとエンジニアリングを学ぶ。趣味は旅行、ビデオゲーム、映画を見ること。
将来は家族と一緒に日本で暮らしたいと思います。
観光庁が提供している「ムスリムおもてなしガイドブック」という冊子を参考にしました。ここではムスリム向けのツアーをプランニングする場合の配慮などについてわかりやすく解説されていますので、ぜひご一読ください。
旅行会社ではムスリム向けの対応を促進するべく、観光地やレストラン、礼拝用のスペースの確保などさまざまな取り組みを積極的に行っています。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えていますものね。
外国人スタッフがいる職場で、社員旅行やイベントを企画する場合は、プロに全部お任せすれば幹事さんラクラク!自分も一緒に楽しめますよ。ぜひ、気軽に相談してみましょう。
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