介護業界や飲食業、製造業などはもとより、どの企業でも恒常的な人手不足に悩まされています。そこで政府は受け入れ拡大を目的とした、新在留資格「特定技能」を盛り込んだ出入国管理法を改正。2019年4月から施行されています。
すでに外国人スタッフが働いている企業はどんどん増え、なんと「社員旅行net」を運営しているわが編集部にもバングラディッシュの青年、カビル・モハイメヌルが、昨年末からシステムエンジニアとして活躍してくれています。
実はカビル、英語(とバングラディッシュの公用語ベンガル語)は堪能なんですが、日本語はいまいち。社内には英語ペラペラのスタッフはおらず、どうやってコミュニケーションをとったらいいのか頭を悩ませていました。
そこで日帰り社員旅行を企画!ムスリムであるカビルとともに浅草&上野を周遊するプランを楽しみました。
この時の体験談をもとに、外国人スタッフにも喜んでもらえるためプランニングのポイントや、宗教・文化の違いに考慮した注意ポイントをご紹介しましょう。
皆さんの職場でも参考にしていただければと思います。
第1回目はわが社のとんでもなくゆるい日帰り社員旅行の模様をレポート。
第2回目ではムスリム社員と旅する注意点をご紹介。おまけとして、カビルに日本での暮らしや仕事などについてのインタビューもご紹介しますよ!
外国人従業員、そしてムスリムの社員が直面しているお悩みについて参考にしていただければと思います。
社員旅行をプランニングするにあたり、幹事(システムエンジニアのボス)がカビルに質問。
「どこに行きたい?」
「東京ディズニーランド!!」
ごめん無理・・・。というのも12月の上旬の日曜日に計画されていた関係で、非常に混み合うことが予想されていました。
ということで、あえなく却下。Facebookの社内グループで参加者を募り、行き先のアイデアを募集することに。
いろんな意見がでましたが「やっぱりスタンダードに浅草じゃね?」というところに着地。浅草観光、水上バスに乗る、大江戸温泉物語で終了という実にベタなプランを当初は計画していました。
普通の社員旅行だと、集合時間を決めてスケジュール通りに進みます。ところが日頃から団体行動が苦手な社風の会社。当然、幹事が決めた予定通り、時間通りにはまったく進みそうにありません。
「午前中は予定があるからランチから合流」
「午後から行くところがあるから途中離脱」
「いま起きた!これからいくかも」
という社員が続出・・・。まさに幹事泣かせです。でもみんななんとか都合を合わせて、カビルと初めてのお出かけを楽しもうと努力している様子がうかがえます。
最近では社員旅行を嫌がる職場も増えていると聞きます。でも大丈夫!わが社のようにゆるゆるでやれば、最終的にはうまくいく(!?)はず。まずは浅草文化観光センター前から出発しましょう。
日本に来てまだ日が浅いカビル。1人で浅草まで来るのは荷が重いということで、システムチーム先輩(こう見えてカビルより年上)が途中で待ち合わせして引率してくれました。
あまり知られていないようですが、浅草文化観光センターの最上階(8階)は無料の展望テラスになっています。北方向からは、仲見世通りと浅草寺が一望のもとに!
西方向は東京スカイツリーも見えてなかなか見ごたえがあります。
22時までは開いていますので、夜景も楽しめますよ。ぜひ浅草を訪れたら忘れずに立ち寄っていきましょう。
浅草寺は「常香炉(じょうこうろ)」が置かれ、いつも線香の煙が上がっています。ここでは、自分の身体の方へ煙を手でかき集めようにして「煙を浴びる」ことを説明。
「体の悪いところに煙をかけると治りが良くなる」という言い伝えから始まったこの行為。頭にかければ「賢くなる」、顔にかければ「顔が良くなる?」と説明。さて、カビルはどこにかけたいのでしょうか。
続いて「手水」で清めてからお参り。見様見真似でカビルもチャレンジします。
実は浅草寺、おみくじに「凶」の割合が多いことでも有名です。
「いざ、運試し!」
やっちまいました。まあ、当たり前の結果ともいえます。
ところがなんと、女子社員がすごいのを引き当てます。
「吉」に「大吉」なんて大丈夫でしょうか、浅草寺で引き当てちゃって。もう年末ジャンボ宝くじが当たる運が残っていないかもしれませんよ。
カビルもいざ運試し!
ええええええー。カビルも大吉を引いているじゃないですか。「凶」をひいてしまった幹事の方がレアなの??
お参りの後は仲見世を散策!たくさんのお店が立ち並び、大勢の人でにぎわっています。
じゃがいもを揚げて、甘辛いたれをかけたおやつをゲット。みんなで食べました。カビルもこのじゃがいものおやつが「おいしかった!」と言ってました。
日本の観光地に必ずある顔出し記念撮影用の看板。被り物が好きなシステムエンジニア(幹事)が、身をもって記念撮影の極意をカビルに伝えます(イマドキの若者であるカビルは丁重に辞退)。
ランチまでまだ時間があるため、お土産ショップをみんなでブラブラ。
「しっかり泡立てて包み込むようにしてお顔をあらうと、汚れ落ちがよくて、肌にも負担をかけないんですよ~」などと説明され手を洗う社員たち。
これからご飯なのでちょうどよかった(!?)
今回の日帰り社員旅行で最も気を使ったのがハラル対応。ムスリムであるカビルは、基本、ハラル認証を取っていない食材や調味料などは食べられません。
外国人観光客が多い浅草なら、ハラル対応可能なお店があるだとうという見込みでいろいろ探した結果、吾妻橋のたもとにある「権八」を予約。ランチコースを予約しました。
と、ここで午前中は参加できなかった社員2名が合流。お店の方がお料理を説明してくれます。
こちらのお店では、ハラル認証を受けたお醤油など、ムスリムの方が全部安心して食べられるように配慮してくれています。
ハラルランチコースですが、基本は和食メニューで焼きとりや天ぷら、一口で食べられるお寿司、お蕎麦などおいしそうなメニューが並んでいました。ノンアルコールのビールテイスト飲料も置いてあり、みんなで乾杯気分も味わえるそうですよ。
「権八」からは隅田川や吾妻橋が一望できます。こちらの不手際でご迷惑をかけたのに、嫌な顔せずに対応していただき、ありがとうございました!おいしかったです。
吾妻橋の向こう側にアサヒビールの本社とオブジェ、スカイツリーが見えるというおすすめの撮影ポイント。この後ライブに行くという女子社員が離脱するので記念撮影しました。
2人来て、1人去る。そしてまだあと1人来てない・・・。
連絡してみると寝坊したので、1人でお昼を食べているという返事がきます。
予定では水上バスに乗るはずが、運行時間が合わずに断念。大江戸温泉物語に電車で移動しようか迷った末、上野の「国立科学博物館が面白そう!(幹事は理系)」と方向転換しました。
1人でランチしている社員はとりあえず置き去りにして、全員で上野を目指します。
上野につきました。まだまだ色づいた葉っぱが残っています。西郷さんの銅像前を通過。福島県民の嫁社員は、結婚の挨拶で夫の親せき一同に会った際、衝撃の一言をいわれます。
「会津の嫁(実家は中通りなんですけどね)になったからには、薩長は敵だから!」
「???」
冗談かと思いましたが、誰も目が笑っていない。“明治維新”の際に受けた仕打ちを、福島県民はいまだに忘れていません(長州はテロリストだともいってました)。
社員に福島出身の方がいる場合は、薩長関連はタブー(鹿児島や山口に旅行するなど)です。西郷さんの銅像の前でへらへらと笑っていたのがばれると叱られるかも・・・。
そんな複雑な日本の歴史を、つたない英語でカビルに説明することができるわけもなく、先へ進みます。
国立科学博物館(科博)は、1877年にオープン。自然史・科学技術史に関する総合科学博物館です。常設展としては「日本館」「地球館」の他、屋外展示や特別展、企画展などを行っています。
幹事が理系なので「地球館」へ向かいます。1階は地球史。地球上のとその多様性を伝える展示です。
138億年を宇宙史・生命史・人間史の物語として伝えるもので、スケール感が違います。最もインパクトがあったのが、牛の体内(胃や腸など)の標本。
牛は胃袋が4つあって腸が長い。でも不謹慎な社員たちは焼き肉屋で食べる部位(ホルモン)のことしか頭にありません。
しかしパンダとかの標本の隣に、なぜ牛の内臓の標本があるのか?その展示のルールがわからないまま2階へ向かいます。
2階は科学と技術の歩みがテーマの展示。変動する地球の様子を示す画像やデータを準リアルタイムで紹介する観測ステーションなどもあります。
いろいろな技術について体験できるように工夫はされているのですが、文系には何が面白いのかさっぱりです。
そうこうしている間、まだ来ない社員(1名)が『めんどくさいから帰る』と駄々をこねるのを一生懸命説得。なんとか国立科学博物館「地球館」まで誘導します。
ようやく最後の1名が合流し、3階へ。ここは哺乳類と鳥類のはく製が展示されているフロア。ともかくその数に圧倒されます。
2階で下がったテンションが再び上昇!文系にはわかりやすい展示でした。
国立科学博物館はともかく大きくて広いので、時間を決めて館内は自由行動にしてもいいかもしれません。それぞれの興味はいろいろ。マイペースで楽しめるのでおすすめです。
国立科学博物館を出た後は、幹事による御徒町ツアー。年末年始は大混雑するアメ横商店街を巡ります。ハラル系の食材を扱うお店などもありました。
その後はゲーセンに行き、みんなでプリクラ。最近のやつは修正が凄すぎてもはや原型をとどめていません・・・。
ここからはおのおの自由解散。主婦や家が遠い人は帰宅し、遊び足りない人々は居酒屋で二次会へ。始まりも自由なら終わりも自由です。
何から何まできちんと計画されている社員旅行もあれば、わが社のように終始ゆるゆるなものもアリです。幹事さん、あまり気負わずに楽しんで実施しましょう。次回はムスリム社員と旅行する場合、社内イベントを企画する場合の注意点をお伝えします。
人数が多い、きちんとした会社でしっかりとしたプランニングが欲しい。そんな場合は「社員旅行net」から旅行会社に相談!ムスリム対応も含めた旅のプランを提案してくれますよ。
もちろん、日帰りや社内イベントの企画もOK。どうぞお気軽に問い合わせてみてくださいね。
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